ふなずし

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ふなずし(鮒鮓、鮒寿司などの表記も)とはフナを主材料としたなれずしである。主に滋賀県琵琶湖沿岸で作られる郷土料理である。

表記[編集]

本来、なれずしという意味では「」を用いるべきであり、寿司握り寿司に対する当て字である。このため、「鮒鮓」、「ふなずし」と記するのが正しい。「鮒寿司」が一般的になっている。

概要[編集]

産卵期に沿岸にやってくる大量のニゴロブナを捕らえて作った。冷蔵庫のない時代、大量の二ゴロブナを保存する方法としてなれずしにした。漬け込んでいる間に乳酸菌による嫌気発酵で骨まで柔らかくなっており、酸味が出てくる。これが本来の「鮓」である。同様なものとして「鮎鮓」や「鱒鮓」があるが、消費者の好みから葉に包まれた押し寿司となった。鮒寿司がそうならなかったのは小骨が多く、発酵を進めて骨を柔らかくするためであった。現在の握り寿司は江戸時代から作られ、で酸味をつけた「早鮨」である。

製法[編集]

ニゴロブナを用いる。鱗と内臓を取り出し、で漬ける塩切りをする。数週間後に取り出して鱗や内臓の取り残しがないよう水で洗って約1時間乾燥させる。次に、炊いて冷やした、塩とともに木の樽の中に入れる。塩を入れるのは味を整えるためと雑菌の繁殖を抑えるため、飯から水分を出して糖分を出すためである。発酵を促進させるためにを入れることもある。また、木の桶には長年鮒寿司を漬けて乳酸菌が住みついている。この本漬けは数か月、ときには数年間発酵させることである。

歴史[編集]

室町時代には天皇に鮒寿司を献上したという記録がある。また、朝鮮出兵の際には豊臣秀吉に鮒寿司が献上したという記録がある。江戸時代には近江国から征夷大将軍に献上した記録がある。彦根城二代城主井伊直孝のときから毎年春秋に征夷大将軍に献上するのが恒例であった。

神事[編集]

鮒寿司を神社に貢納する儀式は琵琶湖沿岸で行われ、納めた鮒寿司を神社の氏子が食べる儀式もある。このように鮒寿司は神事と深く関わっている。

食文化[編集]

そのまま食べることもあるが、茶漬け、吸い物にすることもある。乳酸菌による嫌気発酵で骨まで柔らかくなっており、アミノ酸などの旨味成分もある。匂いが強く、年少者は好まないが、高齢者になると好むようになるという。また、女性よりも男性が好むとされる。世界各国に伝わる癖のあるチーズに誰もが最初は敬遠されるように、鮒寿司も好き嫌いが分かれるという。日本酒との相性も良いという。かつては、東京駅に置いてもほとんど売れず、買ったのは滋賀県だけだったとか、あまりの臭さに瀬田の唐橋から捨てたとか、お土産にもらった物を腐っているものと思って返品したとか、汽車の中で食べていたらその客車から人がいなくなったとかいろいろ逸話がある。

現状[編集]

琵琶湖の水質悪化、湖岸改良、外来魚による食害によって二ゴロブナの漁獲高が減少し、店頭価格が高騰している[1]ゲンゴロウブナを二ゴロブナの代わりに用いられるようになった。また、ハスオイカワウグイは生なれずしにするほか、さらに、外来魚のブラックバスをなれずしにする試みがある。

かつては各家庭でも作られていたが、二ゴロブナの不漁による値段の高騰、作るのに手間がかかること、若年層が好まないことによる核家族化によって作られなくなった。

製造上の注意[編集]

一部の愛好家によって小規模に作られることがあるが、伝統的な製法でないと嫌気的条件からボツリヌス菌が増殖する可能性がある。

脚注[編集]

  1. 2008年頃の近江八幡駅前の平和堂で2500円。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]