学校物理

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学校物理(がっこうぶつり)とは、主に高等学校検定教科書およびその指導書のみに使われ、物理学のトレンドから離れた物理教育法。

概要[編集]

高校の物理は、

  • 作用・反作用の法則
  • (角運動量を含む)運動量保存則
  • 加速度は運動量の変化に比例する

くらいしか覚えることがないので非常に簡単である。五十年くらい昔だとSI単位系が普及していなかったうえに関数電卓が普及していなかったので換算がややこしかったが、現代では(というか、ニュートン力学の範囲内では)「ディメンジョン(次元)を合わせて係数(1/2とかが多い)を合わせればだいたいなんとかなる」くらいの話である。あとは微分と積分の話になり、「『加速度は運動量の変化に比例する』んだったら、加速度を積分すると運動量が出てくるのか?」「質量が一定で摩擦抵抗がなければな」くらいの話はちょっと出来のいい高校生なら普通にできる。なお、特殊相対性理論や量子力学の基礎くらいは高校数学の範囲内でおさまる。
ところが、これすら、授業でまともに教えられておらず、苦手とする学生は少なくない。
「馬鹿か?」「馬鹿馬鹿しい」と言明すると差別語になってしまうので、「愚かしい」と表現しておこう。

なお、「基礎科目の物理基礎で、『工業高校などの、普通科でない高校生』の受講も考慮しすぎる余り、全体的に数学との親和性が排除されて、物理の苦手意識の醸成に繋がっている」との批判があり、「微積で解いて得する高校物理」という本まで出されている[注 1]
「ノーベル物理学賞の大半が素粒子物理学分野になっている中、昔ながらのニュートン古典力学からの積み重ねの大切さが理解できずに興味を失う生徒も少なくない。」という意見があるが、湯川・朝永・ファインマンの時代でもあるまいに、「そういうモンでもねぇんだよな」という反論はあると思う。機械工学では基本的にニュートン力学しか使わないので、問題なのは「コンピュータープログラムが書けない教師がいる」ことだろう。ニュートン力学では微分方程式は立つのだが、現実的なモデルで実用的な解を求めることが非常に厄介(つーか、非線形の微分方程式は全くと言っていいほど解析的には解けん)であり、模型実験をするとかコンピュータをぶん回して数値的に解くしか現実的な手がない。そういう泥臭い努力ではなく「アイデア一発勝負」なところが昔はよかったのだが、現在の素粒子物理学なんかは「ヒト」「モノ」「カネ」の総力戦になりつつある。小柴さんもカミオカンデを作って、たまたまSN1987Aが超新星爆発を起こしたからノーベル賞を獲ったわけだし。

弊害[編集]

例えば、大学の理系学部で共通基礎教育で履修する「力学」では、

  1. ベクトルはアルファベットをゴシックで記載
  2. 変位速度は相互に微分積分の関係
  3. 仕事量は、力と変位のベクトルのスカラー積

と教えており、高大で教育内容の連携どころか断絶の状態である。

このため、高校の内容で定着した学生が、大学の物理学の学習で落ちこぼれるケースも珍しくない。

関連項目[編集]

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  1. もっとも、「微積で解いて得する高校物理」の著者もベクトル積と関連する力のモーメントなど、解法の限界があることは承知している。