総合型選抜

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総合型選抜(そうごうがたせんばつ)とは、日本の大学入学者選抜方法のひとつ。

概要[編集]

大学の入学管理局(admissions office)が入学者選考基準を決め、その選考基準に基づいて、学力試験を課さず、高等学校における成績や小論文、面接などで人物を評価し、入学の可否を判断する選抜制度。

過去の日本では、AO入試(エーオーにゅうし、アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれたが、2021年度より現在の名称となった[1]米国で経費節減と効率性を目的をして制定され、日本では1990年に慶應義塾大学が導入し、各大学に拡充していた。
なお、日本においては、大学自らがアドミッション・オフィス入試と呼称しているものの、研究組織から独立したアドミッション・オフィスが総括して大学入学者選抜を行う米国の制度とは異なった日本独自の選抜方法となっている[2]

日本国内での実施状況[編集]

日本の総合型選抜は、学科試験の結果で合否が決まる一般入試とは異なり、内申書、活動報告書、学習計画書、志望理由書、面接小論文などにより出願者の個性や適性に対して多面的な評価を行い合格者の選抜を行う。

1990年慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC2学部)が、他に先駆けてアドミッション・オフィス入試を導入した。 2000年度は大学入学者の1.4%であったが、2012年度は大学入学者の8.5%とAO入試は増加傾向となっていた[3]
同様の選抜方式が一律にAO入試と称されている訳ではなく、自己推薦入試(AO入試とは別に自己推薦入試という名前の入試が存在する大学もある)、公募推薦入試、一芸入試等[注 1]、各学校、各科により名称は様々である。
2021年の名称変更後は、公募推薦入試と事実上統合された。

一部の学部(主に医学部・歯学部・薬学部等)においては、大学共通テストまたは大学独自の個別筆記試験を課すことがある。例えば、長崎大学医学部医学科の2012年度AO入試では、センター試験で80%以上の点数を取っていなければ合否の選抜対象にならなかった。

また、慶大総合政策学部環境情報学部(SFC2学部)は日本数学オリンピックや各種科学コンテスト、弁論大会等、所定のコンテストで優秀な成績を収めた受験生に対する入学枠を用意している[4]

課題[編集]

過去のアドミッション・オフィス入試では、どのような学生を求めているのか、出願資格、選抜基準が明確でなく、公募推薦入試指定校推薦入試とどこが異なるのかはっきりしない、あるいは学生の青田買いに繋がることが懸念されるといった問題点も指摘されていた。

中央教育審議会」(中教審)の場で、「AO・推薦入試」が、「大学生の学力低下につながっている」と危惧する声があり、学力を担保するために、新たに設ける学力試験「高大接続テスト」(仮称)を実施すべき[5][6]との検討がなされている。前述のセンター試験を課す大学も増えており、例えば九州大学筑波大学などにおいて通常の学力試験を付さないAO入試の入学者は学力が一般入試の入学者に比べ学力が振るわず退学をするといったケースも見られて、センター試験を付したものとなるケースが増加している[7]

また、多くの私立大学においてAO入試が学校経営安定の為の入学者の早期確保の手段となってしまっているという指摘がある。旧来型の推薦入試では出願が11月以降という決まりがあるが、AO入試にはこの規制がないため、夏休み前に合格者を出しているケースも少なくない[8][9]。一方で、入学までに空白期間が生じることを利用し、「入学前教育」を実施している大学が多く出てきている。ベネッセコーポレーションが2005年度にAO入試を実施した大学を対象に調査したところ、74%の大学が入学前教育を行っていた[10]

「公平性の担保」の観点からも、AO入試の公平性を疑問視する意見が多い。偏差値の高い高校・大学ほど、その傾向が強く、濱中淳子の調査によれば、高校側は、AO入試についての「あまり公平でない」 「まったく公平ではない」の合計比率は、進学率上位校教師で69.2%、中位校教師では62.8%、下位校教師で55.6% であり、大学側のAO試験についての「あまり公平でない」 「まったく公平ではない」の合計比率は、偏差値上位校の教員で57.2%、中位校教員では49.3%、下位校教員44.0% という結果であった。[11]

一方、AO入試で入学した学生の方が一般入試で入学した学生よりも学力が優れているという報告もある。例えば慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスでは、「AO入試の導入以降、一貫してAO入学者のGPA(Grade Point Average)換算の成績(平均値)が一般入試による入学者よりも高い。」[12]。また、早稲田大学の政治経済学部では、2000年から社会人入試をAO入試に切り替え、「2000年から2004年において、(AO入試による)合格者総数 460 人の入学後の学業成績も、一般入試による入学者に比べ概ね良好である」と報告している[13]。また、東北大学は慶應義塾大学の「SFC型AO入試」(「面接、および、出願書類を主たる選抜資料とする選考手続き」)と一線を画した『研究中心大学という東北大学の理念から 導かれるアドミッション・ポリシー』に基づく「学力重視のAO入試」を推進し、学内調査においても、AO入試による入学者がお おむね良好に学業に適応しているという結果が出ている[14]。このため、東北大学ではより学習意欲が高い学生を獲得するため、一般入試の後期試験を廃止し、AO入試枠を拡充した[15]

評価[編集]

古市憲寿は、自身が慶應義塾大学環境情報学部にAO入試で進学した経験を踏まえて、「勉強しかできない人以外もいい大学に入れるというのは、ある種健全になったと思いますね。「コミュニケーション能力のないガリ勉」って、仕事でも使えないことが多いじゃないですか。社会一般の基準に大学側が近づいたという点で、評価できると思います」と評価している[16]

脚注[編集]

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  1. 例:亜細亜大学の一芸一能推薦入試など
出典
  1. 総合型選抜とは?AO入試からどう変わった? benesse。
  2. 大学入試の改善について (中間まとめ):文部科学省 2 アドミッション・オフィス入試の適正かつ円滑な推進 (1)アドミッション・オフィス入試の意義と現状
  3. 文部科学省 高大接続特別部会(第4回) (平成24年12月17日) 配付資料
  4. “AO入試:総合政策学部・環境情報学部” (プレスリリース), http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/ao_sfc.html 2015年10月8日閲覧。 
  5. 「高大接続テスト 大学生の学力低下をどう防ぐ」 読売新聞 社説 2009年1月7日
  6. 「学力確保へ高校でテスト 大学と連携して検討」朝日新聞2009年2月8日
  7. http://www.j-cast.com/2012/11/22155059.html?p=all
  8. <3> AO入試 青田買い過熱”. 入試は変わったか. 読売新聞 (2007年5月2日). 2008年8月14日確認。
  9. 「AO入試 青田買いの手段ではならぬ」読売新聞社説 2008年5月12日
  10. 『第2部・「全入時代」の幕開け/3 入学前教育』 毎日新聞、2006年12月6日東京朝刊
  11. 「大学入試のあり方を考える : 高校側の視点・大学側の視点」 鈴木規夫, 山村滋, 濱中淳子著 大学入試センター研究開発部, 2009.3
  12. 文藝春秋 2009年1月号
  13. 政治経済学部PDF 早稲田大学教務部 2005年度 自己点検・評価報告書、Ⅲ-01-21頁(PDF19頁)
  14. 東北大学機関リポジトリ 報告書 「東北大学AO入試における調査書利用の考え方と高校側の意見」 倉元直樹 ,西郡 大 ,當山明華 ,石井光夫
  15. 第1志望の学生獲得ツール「AO入試=バカ」の誤解” (2012年9月). 2015年10月8日確認。
  16. 古市憲寿は「努力したことがないから、いけ好かない」と思われている? 週刊朝日